黒トリュフを人工的に生み出す
森林研究・整備機構森林総合研究所などのグループが、高級食材としてである黒トリュフを人工的に生み出すことに成功しました。これに続き昨年には白トリュフの人工発生も確認され、今後は両方のトリュフが安定的に成長する条件を見つけ出し、栽培技術の開発を進める計画です。
トリュフはセイヨウショウロとも呼ばれ、マツタケと同じく共生菌として樹木の根と相互作用して生育します。国内には20以上の種類が自生しており、その中から期待される食材として研究が進められています。山中高史東北支所長(微生物生態学)らは2015年ごろから、トリュフの生育に適した樹種や土壌環境を調査し、国産のトリュフを人工的に生み出す試みを開始しました。
研究では、黒トリュフのアジアクロセイヨウショウロと白トリュフのホンセイヨウショウロが人工発生の対象とされました。これらは国内で比較的広く見られ、人工発生が可能とされる種でした。トリュフの生育には共生する樹木と菌根菌の相互作用が必要で、これが難しさの一因とされています。
具体的な手法としては、マツタケの人工栽培実験の経験を生かし、トリュフの菌をコナラの根に接種する方法が取られました。黒トリュフについては2016年に試験地に菌を付けたコナラの苗木を植え、7年目の今年10月に岐阜の試験地で地表面に球形の黒いトリュフが発生する成功を収めました。白トリュフについても2017年からの試行の結果、10月に茨城県、22年11月に京都府の試験地でキノコが発生し、それぞれ6年と3年7ヶ月の期間を経て人工発生が確認されました。
今後は、黒と白のトリュフそれぞれの土壌環境の特性を調査し、毎年安定的に発生させる技術の開発を進める予定です。山中支所長は、「トリュフもキノコをつくるためには、実験地の周りの土地利用なども含め、キノコができる条件を明らかにしていきたい」と語っています。
この研究結果について
この研究は非常に興味深く、食材に対する新たな可能性を探る素晴らしい試みですね。国産のトリュフを人工的に生み出すことが成功したことは、食文化や産業において新たな展望をもたらすでしょう。
特に、トリュフは高級な食材として知られ、その独特な香りや味わいは多くのシェフや料理愛好者にとって魅力的です。これまで輸入に頼っていたトリュフを国内で安定的に生産できるようになることは、食の安定供給にも寄与することが期待できます。
研究チームが地域の土壌や気候などの特性を考慮しながら、黒と白の両方のトリュフを人工的に発生させた点も注目です。これにより、国内のさまざまな地域での栽培が可能になり、地域特産品としても活用できるでしょう。
また、トリュフの栽培には共生する樹木との相互作用が必要であるという難しさがありましたが、その克服が成功したことは、微生物生態学や農業においても新たな知見を提供するものとなりそうです。
これからの展望として、安定的な生産技術の確立や、地域ごとのトリュフの特性に対する理解が進むことで、食卓に新たな味わいや料理の幅が広がることを期待しています。